日本のテレワーク実施率は25%!アメリカと50%も違う理由とは?
昨今の新型コロナウイルスの流行によって「テレワーク」という言葉を耳にしない日は無いのではないでしょうか。
ところで、日本では一体どのくらいテレワークが実施されているのか、ご存知でしょうか。
以下のグラフは2021年5月に2回目の緊急事態宣言が発令された際の、1週間の就業形態別のテレワーク時間のグラフです。(リクルートワークス研究所が実施した「全国就業実態パネル調査 2021 臨時追跡調査」)
実施率はわずか25%の割合でした。したがって、75%の人たちは普段通り、会社に通って、通常業務を行なっていたということです。
(出典:株式会社リクルート:コロナショックは日本の働き方を変えるか)
この数字は欧州やアメリカのテレワーク実施率と比べると、限りなく低い数字になります。ではなぜ、緊急事態宣言にもかかわらず、ここまで低い数字なのでしょうか。
本記事では日本のテレワーク実施率が25%という現状にとどまっている理由、そしてアメリカと比べるとなぜ低いのか、そして何を変えれば、テレワークの実施率を上げられるのか、これらを解説していきます。
目次
日本のテレワーク実施率はわずか約25%
前述したように、日本のテレワーク実施率は25%です。(2回目の緊急事態宣言時)
では1回目の時の数字はどのくらいだったのでしょうか。
緊急事態宣言(1回目)→32.8%
緊急事態宣言(2回目)→25.4%
出典:株式会社リクルート:コロナショックは日本の働き方を変えるか
去年の1回目の緊急事態宣下年生よりも7.4%下回っています。下回っている理由が下記の通りです。
・人々が新型コロナウイルスに慣れてしまった
・テレワークで仕事するよりも、出社した方が生産的
・テレワークが単純にキツイ
新型コロナウイルスという環境に慣れ、緊急事態宣言も「飲食店の時間が制限される・集客施設に行けなくなるだけ」と考える人も多くなり、コロナの環境に慣れてしまったということが理由です。
また、テレワークは1人の仕事をする人にとってはうってつけのワークスタイルですが、コミュニケーションを取りながら仕事をする人にとっては苦痛でしかありません。
事実、新型コロナウイルスの流行によって、人とのコミュニケーションが減って「うつ病」の患者が2倍以上になったという事例もあります。
日本のテレワーク実施率はアメリカと比べると、非常に遅れています。
アメリカのテレワーク導入率と導入が進んでいる理由
(出典:厚生省:テレワークポータルサイト:海外のテレワークの導入状況)
上記は日本と諸外国のテレワークの導入率を比較したものです。アメリカは2015年度に85%を達成しているのに対し、日本では19%と60%以上の差をつけられています。
今でこそ、日本は25%以上の実施率になっていますが、少なくともアメリカと日本では50%以上の開きがあるのは間違い無いでしょう。
なぜ、アメリカはテレワークの導入が進んでいるのでしょうか。これには理由があります。
アメリカでテレワークの導入が進んでいる理由とは?
・アメリカはワークライフバランスを重視する文化だから
・アメリカは日本のように、出社して仕事をするという義務がない(会社による)
・アメリカは多民族国家なので、働き方に関して非常に寛容
皆さんはアメリカ人から「なんで日本人はそんなに生真面目に働くんだ?」と聞かれたことはありませんか?実際にアメリカ人から見たら、日本人が毎日満員電車に乗りながら当たり前のように残業をして、夜遅くに家に帰ってくることはありえません。
アメリカ人は自分の仕事が終わったら、さっさと家に帰って、お酒でも飲みながら家族と一緒に夕飯を食べるというのが当たり前の文化です。
また、多民族国家なので、文化も違います。例えば、ヒンドゥー教の人たちは毎日決まった時間に「お祈り」の時間があります。もちろん会社もそれに伴い、その人たちを尊重する義務があり、仕事の時間を「祈り」の時間に合わせることも必要になります。
これらの理由からテレワークはアメリカにとってまさにぴったりな働き方です。
日本の働き方の現状
逆に日本はというと…
・「プライベートよりも仕事」は当たり前
・残業=正義
・会社の文化を崩さない
特に、今の上司や管理職の多くは「働くとは、会社に来て自分の仕事が終わるまで働くこと」と思っています。
そして、アメリカのようにワークライフバランスを考えず、仕事を推し進めていきました。そのため、テレワークの実施率が他の国と比べて低いのです。
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何故日本は、アメリカのようにテレワークの実施が進まないのか?
前述したように、日本の「昔ながらの文化」でテレワークの推進を妨げている部分があります。しかし、それだけが理由ではありません。次のような点も日本でテレワークが進まない要因になっています。
職種によってテレワークが実施できない職種がある
どの国でも共通して言えることがですが、もちろんテレワークを実施できない職種は存在します。たとえば、日本では下記の職種です。
・接客業
・建設業
・工場・製造業
・小売業
・物流業
・医療、福祉業
上記の職種はどうしても「人の判断・手・目」が必要になります。もちろん、部分的にテレワークが可能な職種もあります。
たとえば、ホテルなどの接客業でも総務や経理担当であれば、PCさえあればテレワークは可能です。しかし、現場で働く人はそうはいきません。
特に、工場・製造業に関しては、製造ラインなどが止まれば、商品は製造・生産されません。したがって、部分的にはテレワークが推進できても、全てをテレワーク化するのは難しい状況です。
政府による積極的な後押しがない
2020年の新型コロナウイルス流行に伴い、政府は「テレワーク実施率を7割」という目標を掲げました。
しかし、現実は1度目の緊急事態宣言の32.8%が限界で、半分以上未達となっています。特に、政府は企業側に「出来るだけのテレワークを推進するように」と通達したのみで、それ以上の対応はありませんでした。
企業はあくまでも「強制ではなく、推進」と捉えているので、無理なく現状のままの勤務体制で続けていく企業が多いのが現実でした。
このように、政府側から企業への助成や処置がなかったことで、企業側もなるべくの範囲でテレワークを推進したのみで終わる、という結果になってしまったのです。
企業のICT(情報通信技術)の導入への抵抗感
日本のテレワーク推進の遅れの原因の1つとして、企業の「ICT(情報通信技術)の導入への抵抗感」があります。ICTを導入すれば、テレワークや部分的な仕事の自動化が可能になりますが、次のようなリスクやコストへの懸念点が導入のネックになっているようです。
・ICTを企業で導入するのには費用がかかる
・詳しい人がいない(特に中小企業など)
・ICTの使い方を理解するのに時間がかかる
・セキュリティが万全でないといけない(企業情報が漏れる可能性がある)
特に懸念されるのが「コスト面」です。ICTは個人で導入するのにそこまでコストはかかりませんが、企業単位で導入した場合は話が別です。
また、教える人や詳しい人も少なく、使い方を理解するのにも時間がかかります。したがって、「時間がかかってコストもかかるならこのままでいい」という企業が多いのです。
特に、新型コロナウイルスの影響で、どの企業も経営状況は良くありません。その状況でコストを増やせませんので、いまだICTに手を出せない企業が多いのが現実です。
日本の就業規則
日本の就業規則もテレワーク推進を阻む要因の1つとなっています。
たとえば、普段会社で仕事をしている場合、会社から退勤したらそこまでが就業時間です。出張先であれば出張の仕事が終わり、そこで上司に退勤報告をすればそこで終了です。
しかし、テレワークの場合はそうはいきません。就業時間が曖昧になってしまい、上司も把握ができないという事態も起こります。
そのため、「就業時間を正確に把握するため」という理由だけで、テレワークができる職種にもかかわらず、会社に出勤して仕事をするという企業もあるほどです。
日本のテレワーク実施率を上げるための具体策とは?
今の日本で、すぐにテレワークの実施率を上げるのは難しいでしょう。なぜなら、国が企業に対して、支援や具体的な政策を行っていないからです。
前述したように、そのために企業側も積極的に動いていないということもありますが、改善策はあります。
ICT(情報通信技術)の積極的な導入(国、企業主体で)
ICT(情報通信技術)はテレワークの実施率をあげるために不可欠なものです。どの企業でもICTの導入なくして、テレワークの実施やワークライフバランスの向上は見込めません。
しかし、個人が主体となっても無理があります。そこで、国がICTを積極的に導入する企業に支援をする政策を作り、企業が主体的に動けるようにできるシステムを作るべきでしょう。
ICTの導入はコストはかかりますが、企業にとってメリットです。
・企業のイメージが上がる
・求人する際に、若い人が入りやすくなる
・ES(従業員満足度)が上がる
ICTを導入すると、テレワークや最先端の技術で仕事ができるため、企業イメージが上がります。そして、求人する際に若い世代が入りやすくなります。
最近の若い世代の仕事を選ぶ基準は給与ではなく「自由な働き方できちんと休みが取れる会社」にシフトしています。
特に、従業員満足度が求人をする際に非常に重要となるので、企業にとってもICT導入はメリットです。
就業規則を変えていく
就業規則を変えていくことも、テレワークの実施率を上げるためには不可欠です。何故なら、就業規則のせいで、テレワークが可能な企業でもテレワーク導入をしない企業が多数存在するからです。
労働時間が曖昧になってしまうテレワークでは、評価も曖昧となってしまうため、導入をためらう企業が多くなっています。
つまり、日本では「会社に出社して働いた時間=労働時間」という文化が根強いということです。アメリカなど、海外の場合、逆になります。
目標と成果によって、業績評価、それに対する給料というスタイルなのでテレワークでも可能な文化になっています。
したがって、日本の就業規則もアメリカなどと同じく、目標と成果による基準に変えていく必要があるのではないでしょうか。
アメリカをはじめとする海外のテレワーク実施方法を参考にする
前述したように、就業規則をアメリカや海外の基準に合わせることも必要、と言いましたが、海外のテレワークの実施方法も参考にするのも1つの手です。
もちろん、文化の違いで難しいところはあります。しかし、昨今の新型コロナウイルスの流行で日本の社会、企業も変化を求められています。
現在、アメリカのテレワークの普及率は80%以上です。したがって、国が主体となり、アメリカの企業の例を参考に、テレワークを進めていくのも良いのではないでしょうか。
テレワークの実施率は遅れさせているのは、日本の古い企業体質
テレワークの実施率がアメリカや欧米と比較して遅れている原因は「日本の古い企業体質」が原因でしょう。
・テレワークは未知の世界、テレワークで働くのが全くイメージできない
・部下の労働時間が曖昧だから、評価の基準も曖昧になる
・組織自体は変わる訳ではないから、現状維持でいこう
このように、古い企業体質から脱却しないので、テレワークの実施率がなかなか上がらないのでしょう。
もちろん、日本には素晴らしい企業がたくさんあります。良い製品を作り、日本の工場のラインは世界NO.1とも言われています。
しかし、時代は変わります。
ずっと同じやり方でやり通すことは難しいです。今後は、柔軟な働き方を考えていき、社員一人ひとりの満足度を上げていくことも大切ではないでしょうか。
企業は積極的にテレワークを実施しつつ、社員のワークバランスを考えることも大切
テレワークの実施率もあげることも大切ですが、テレワークはあくまでも「手段」です。目的は「社員をより良く、安全に働きやすくするため」です。
したがって、テレワークで社員の生産性や、連携が落ちてしまった場合はテレワークは難しいと判断しても良いのではないでしょうか。
その代替案として時差出勤や、フレックス制の働き方にするなど、テレワーク以外でも方法はあります。
大切なのは企業に利益をもたらしている社員です。テレワークの実施率を上げることも大切ですが、社員の境遇をないがしろにはしないようにしましょう。
まとめ
日本のテレワークの実施率は、諸外国と比較すると低い水準です。今後、国や企業が中心に進めたとしても、まだまだ時間はかかるでしょう。
しかし、ICTやAIが発達して積極的な導入を行っていけば、アメリカや他の国に追いつくことも可能でしょう。同時並行で、企業の内部改革(就業規則を変える等)を行えば、働き方改革も大きく前進できます。
もちろん、テレワーク導入が難しい企業も多いですが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに国も企業も「働く在り方」を考えていくことが大切なのではないでしょうか。
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