テレワークでテザリングの使用は禁止すべき?テザリングに潜むセキュリティリスクとは?
インターネット接続方法も多様化していますが、そのなかでも手軽にインターネットに接続できる方法として「テザリング」が注目されています。スマートフォンやタブレットを使って手軽にインターネットにアクセスできるテザリングは便利ですが、一方でセキュリティリスクも無視できません。
そこで今回は、テザリングをテレワークで利用するメリットを整理するとともに、テザリングに潜むセキュリティリスク、テレワーク導入企業が社員にテザリング利用を許可する場合に心がけるポイントについて解説します。
目次
テザリングとは?
テザリングとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスをインターネットの接続元として使用し、他のデバイス(パソコンやタブレットなど)をインターネットに接続する技術です。この機能を使うことで、自宅やオフィスのWi-Fiが利用できない場所でも、モバイル通信を利用してインターネットにアクセスできるようになります。
テザリングの通信速度
テザリングの通信速度は使用するデバイスの契約プランや通信環境によって大きく異なります。4Gや5G対応のデバイスであれば比較的高速な通信が可能ですが、3Gやそれ以前の技術では速度が遅くなることがあります。また、接続する場所や時間帯によっても通信速度が変動するため、安定した高速通信を期待するのは難しい場合もあります。
以下は4G、5G対応デバイスでテザリングを使用した場合の一般的な平均値です。
<4G>
ダウンロード速度: 20〜100 Mbps
アップロード速度: 10〜50 Mbps
<5G>
ダウンロード速度: 100〜1000 Mbps(1 Gbps)
アップロード速度: 50〜100 Mbps
上記の数値はあくまで平均的なものであり、実際の速度はネットワークカバーエリアやネットワークの混雑状況、電波の強度、デバイスの性能によって変動します。
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テザリングの通信量
テザリングは利用者が契約している通信キャリアのモバイルデータ通信回線を使用するため、テザリングの通信量は利用者が契約しているプランによります。したがって、使い方や使用時間によっては短時間で大量のデータを消費して月間データ容量を超過してしまい、速度制限がかかることも。
テザリングを利用する際の契約しているサービスプランのデータ通信量を考慮しなければなりません。
参考までに、一般的なインターネット利用における通信量の目安を把握しておきましょう。
<ウェブブラウジング>
1時間あたり: 約60〜150MB
<メールの送受信>
テキストメール1通: 数KB〜数十KB
添付ファイル付きメール1通: 数百KB〜数MB
<ソーシャルメディアの利用(画像や動画の閲覧含む)>
1時間あたり: 約100〜500MB
<動画ストリーミング>
中画質(360p〜480p): 約500MB〜700MB/時間
高画質(720p〜1080p): 約1GB〜3GB/時間
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テザリングできるデバイスは?
テザリングが可能なデバイスは主にスマートフォンやタブレットであり、比較的新しいモバイルデバイスであればテザリング機能を搭載しています。
テザリングの設定方法はデバイスによって異なりますが、基本的には設定メニューの「インターネット共有」や「アクセスポイントとテザリング」などから簡単に設定できます。
テザリングの種類
テザリングにはいくつかの種類があり、それぞれの接続方法にはメリットとデメリットがあります。
Wi-Fiテザリング
Wi-FiテザリングはスマートフォンやタブレットをWi-Fiルーターのように使用し、他のデバイスをWi-Fi経由でインターネットに接続する方法です。この方法は最も一般的で、複数のデバイスを同時に接続できるメリットがあります。しかし、電波の干渉を受けやすく、バッテリーの消耗が激しい点がデメリットです。
Bluetoothテザリング
BluetoothテザリングはスマートフォンやタブレットをBluetooth経由で他のデバイスに接続する方法です。この方法はWi-Fiテザリングに比べて消費電力が低く、バッテリーの持ちが良いのが特徴です。ただし、通信速度が遅く、接続可能な距離が短いという制約があります。
USBテザリング
USBテザリングはスマートフォンやタブレットをUSBケーブルでパソコンなどに接続してインターネットにアクセスする方法です。この方法は通信速度が安定しており、セキュリティが高いのが利点です。また、デバイスのバッテリーを充電しながら使用できるため、長時間の使用に適しています。しかし、USBケーブルが必要であり、接続できるデバイスが限られるというデメリットがあります。
テレワークでテザリングを使用するメリット
一般的に、テレワークでは自宅や外部施設(サテライトオフィスやコワーキングスペースなど)のインターネット回線を利用することが多く、基本的にテザリングを使用することはそれほど多くありません。
しかし、時と場合によってはテザリングが役に立つことがあります。それはテレワークでありがちな次のような場面です。
移動中でも気軽にインターネット接続が可能
手元にテザリング機能装備のスマートフォンやタブレットがあれば、テレワーク中にタクシーや電車で移動する際にもすぐにインターネット接続が可能です。固定のWi-Fi環境に依存せず、どこでも仕事を続けられるため、働く場所の自由度が高まります。
トラブル発生時の予備インターネット回線として
いつも自宅で使っている自宅の固定インターネット回線が不調でなかなかインターネット接続できない場合、テザリングは有効な予備回線となります。急な通信トラブルやメンテナンス時でもテザリングを使用すれば、ひとまずは仕事の滞りを防げるでしょう。
通信費のコストカットにつながる
人によっては自宅にインターネット環境が整っていないことがありますが、そのようなときでもテザリングを使用すれば別途新たなインターネット契約を必要としません。特に短期間のリモートワークや一時的にインターネット接続が必要な場合にはテザリングを使用する方が経済的です。
テレワークでテザリングを禁止する企業がある理由~Wi-Fiテザリングのセキュリティリスクとは?~
テレワーク環境での利便性を考えるとテザリングは非常に便利な手段ですが、使用を禁止している企業も少なくありません。その主な理由はテザリングに潜むセキュリティリスクにあります。
Wi-Fiテザリングが最もセキュリティリスクが高い
先ほど解説した3種類のテザリングのうち、最もセキュリティリスクが高いとされるのは一般的にWi-Fiテザリングです。
USBテザリングやBluetoothテザリングにもリスクがないわけではありませんが、Wi-Fiテザリングには以下のような理由で他の2つよりもセキュリティリスクが高いとされています。
Wi-Fiテザリングのセキュリティリスクが高い理由
・電波の範囲
Wi-Fiテザリングは無線で広範囲に信号を送るため、近くにいる第三者がその信号をキャッチしやすくなります。特に公共の場や人が多い場所では、SSID(ネットワーク名)が周囲に表示されるため、意図しない接続が試みられる可能性があります。
・パスワードの強度
Wi-Fiテザリングではパスワード保護が必要ですが、パスワードが簡単だったり、共有されたりすると、不正アクセスのリスクが高まります。
・暗号化の欠如
一部のユーザーはWi-Fiテザリングを設定する際に暗号化を有効にしないことがありますが、暗号化されていないWi-Fi接続はデータが簡単に傍受されるリスクがあります。たとえば、HTTPSを使用していないウェブサイトの閲覧中に送受信されるデータが盗まれる可能性があります。
テレワーク導入企業は社員のテザリング使用を禁止すべき?
時代とともにインターネット接続の方法は多様化しており、そのときの状況や場面に応じて接続方法を自由に選べるのが本来の理想でしょう。しかし、接続方法の多様化ととも新たなセキュリティリスクが生まれるのが現実です。
いくらテザリングが便利だといえども、テレワーク導入企業が社員のテザリング使用を禁止すべきかどうかは業種や扱う情報の機密性、具体的な業務内容に大きく依存します。
したがって、次のような業種の企業は強固な情報保護が必要となるため、社員個人のデバイスからのテザリング使用は禁止することをおすすめします。
金融業界
金融機関や証券会社は顧客の個人情報や金融データを扱うため、セキュリティが極めて重要です。不正アクセスやデータ漏洩が発生すると企業の信用を落とすだけでなく、法的問題にも発展する可能性があります。そのため、これらの企業では固定回線やVPNを利用したセキュアな接続を推奨し、テザリングの使用は避けるべきです。
医療業界
医療機関やヘルスケア企業も患者の医療記録や個人情報を扱うため、厳重なセキュリティ管理が求められます。テザリングを使用することで、患者情報が漏洩するリスクが高まるため、固定回線の使用やセキュアなネットワーク環境を確保することが重要です。
技術開発や製造業
研究開発部門や製造業では企業の競争力を維持するために機密情報や技術データの保護が重要です。特許情報や開発プロジェクトの詳細が漏洩すると、企業の競争優位性が失われる可能性があります。これらの企業ではテザリングの使用を禁止し、厳重なセキュリティ対策を講じることが推奨されます。
テザリングの使用を許可する場合に心がけたいポイント
やむを得ず社員個人のデバイスでテザリングを使用することを許可する場合は、セキュリティリスクを最小限に抑えるために企業は以下の対策を講じる必要があります。
セキュリティポリシーの徹底
企業は個人デバイスでテザリングを使用する際の明確なセキュリティポリシーを策定し、全社員に徹底させる必要があります。ポリシーには使用可する場面や推奨するセキュリティ対策、違反時の対応などを含めます。
強力なパスワードと暗号化の使用
不正アクセスのリスクを減少させるため、個人デバイスでテザリングを使用する際は強力なパスワードと暗号化された接続を必須とします。
具体的には、テザリング設定時に「WPA3」などの最新の暗号化方式を使用し、ランダム生成された複雑なパスワードを設定するよう社員に指導しましょう。
VPNの導入
テザリングを利用する際はVPN(仮想プライベートネットワーク)を使用して通信を暗号化することで、データの盗聴や改ざんを防ぎます。企業がテレワークでテザリングの使用を許可する場合は社員にVPNの設定と利用を義務付けるべきです。VPNを利用するにはVPNサービス事業者との契約が必要であり、有料となりますが、VPNの導入によりセキュリティレベルがグッと上がるのでおすすめです。
なお、自社でVPNを構築することも可能ですが、技術的な専門知識とコストが必要になります。企業は自社のニーズとリソースを考慮し、最適な方法を選択しましょう。
セキュリティソフトのインストールと更新
個人のデバイスには最新のセキュリティソフトをインストールさせ、定期的な更新をアナウンスしましょう。パソコンではもはや常識となっていますが、スマートフォンに対しては行っていないパターンが多く見受けられるので注意したいところです。
定期的なセキュリティ教育
社員に対して定期的にセキュリティ教育を実施し、最新のセキュリティリスクとその対策について周知を徹底します。社員のセキュリティ意識を高め、適切な行動を促しましょう。
具体的には、四半期ごとにセキュリティトレーニングを実施し、「フィッシングメールの識別方法」や「安全なテザリングの利用方法」について教育します。
教育方法がわからない場合は、最新のセキュリティトレンドに基づいた質の高い教育を提供する外部のセキュリティコンサルティングを利用するのも手です。
定期的な情報セキュリティ監査と評価
企業は、テザリング使用に関するセキュリティポリシーの遵守状況を定期的に監査し、「半年に一度、全社員のテザリング使用状況とセキュリティ対策の実施状況を監査し、問題点を洗い出す」といったプロセスを設けて必要に応じて対策を見直すことが重要です。これにより、常に最新のセキュリティ対策を維持できます。
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まとめ
テザリングはテレワークにおいて便利なインターネット接続手段の一つですが、同時にセキュリティリスクも伴います。企業は情報セキュリティを最優先に考えつつ、社員の利便性と業務効率をバランスよく維持するための適切な方策を講じなければなりません。テレワーク環境を安全かつ効果的に構築するために、テザリングの利用について今一度考えてみてはいかがでしょうか。
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