リモートワーク手当とは?相場とメリット・デメリットを解説
勤務先がリモートワーク導入を決定した場合、会社からリモートワーク手当が支給されることがあります。あまり馴染みのない手当であるため、支給額の見当がつかないかもしれません。
そこで今回は、リモートワーク手当について知りたい方のために基準や相場、メリットとデメリットについて詳しく解説します。通勤手当廃止の際の注意点や企業の導入事例も紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
目次
リモートワーク手当とは
リモートワークには通勤時間の削減や生活の質の向上、育児・介護と仕事の両立など柔軟な働き方を可能にするメリットがあります。
その一方、自宅で仕事をする時間が増えるため、光熱費や通信費の増加など家計に負担がかかってしまいます。そこで、従業員のリモートワークを経済的にサポートする制度である「リモートワーク手当」が登場しました。ここでは、リモートワーク手当が導入される背景と義務、相場について解説します。
リモートワーク手当が支給される背景
リモートワーク手当が支給されるようになった1番の理由は、新型コロナウイルス感染拡大の影響と言えるでしょう。コロナ禍でリモートワークが推奨され、多くの企業がリモートワークを導入し始めましたが、従業員にとって喜ばしいことばかりではありません。
なぜなら、前述の通り自宅で仕事をするようになると光熱費や通信費が増加したり、仕事に適した環境を整備しなければならなかったりと、経済的な負担がかかるからです。このような背景から、企業は手当の支給という形で従業員のリモートワークをサポートする体制を整えるようになりました。
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リモートワーク手当を支給する義務
子どもの在宅時間が長くなる夏休みは光熱費が上がるのと同じで、リモートワークで在宅時間が長くなれば諸費用がかさみますから、リモートワーク手当が支給されるようであれば、従業員としてはぜひともいただきたいもの。
しかし、企業がリモートワークを導入したとしても、リモートワーク手当の支給は法的に義務付けられているわけではありません。支給は企業の判断にゆだねられているのです。
リモートワーク手当の相場
リモートワーク手当の支給額は企業によって異なります。相場は月額1,000円から5,000円程度が一般的だといわれていますが、なかには一万円を超える企業も。
リモートワークと出社の両方の形態(ハイブリッド勤務)で勤務している場合も、日額100円から500円程度とさまざまです。
リモートワーク導入企業への転職を希望する際はここをチェック!
リモートワークを導入している企業への転職を検討している場合はリモートワーク手当を期待してしまうのではないでしょうか。しかし、前述の通り、企業側に法的な支払い義務はありませんし、リモートワーク手当が支給される会社であっても金額は企業によって異なりますから「想定より少ない」とがっかりすることもあるでしょう。
1日に換算して勤務日数分のみ支給する会社もあれば、月額数千円などの固定金額を支給する企業もあります。手当の金額は各企業の判断となるため、実際にリモートワークにかかる費用を算出しなければ、リモートワーク手当の金額が適切な金額かどうかはわかりません。
手当をメリットと感じてリモートワーク導入企業への転職を検討する際は、募集要項をしっかり確認しましょう。募集要項に記載がない場合は面接時、内定後は労働情条件通知書などで確認することをおすすめします。
リモートワーク手当の給与計算上の扱い
リモートワークを続けようと考えている方は、リモートワーク手当が給与計算上どのように扱われるのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論、課税または非課税となるかどうかによって手取りに影響が出てきます。また、社会保険料の基礎になるかどうかも確認したいところです。
課税対象かどうか
リモートワーク手当が課税対象なのか非課税なのかという税務上の問題は、手当の支給方法によって判断が異なります。毎月一定額を手当として支給される場合は「給与」の一部として課税対象になります。
一方、かかった費用相当額が支払われたり、リモートワークに必要なものを貸与したりする方法なら課税対象にはなりません。
社会保険料の基礎になるかどうか
リモートワーク手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償にあたらないもの)である場合、社会保険料の算定基礎に含まれます。通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がなければ(例えば、企業が労働者に対して毎月5,000円を渡し切りで支給するもの)、算定基礎に含まれると考えられます。
(参考:社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含めるべきでしょうか?)
モートワーク手当が支給されるメリット
リモートワーク手当は明確な導入基準があるわけではなく、企業に義務付けられている制度ではありません。それにもかかわらず、多くの企業がリモートワーク手当を導入している理由は、企業と従業員の両方に次のようなメリットがあるからです。
メリット①コストの削減
リモートワーク手当はオフィス勤務からリモートワークへの移行によって不要となる通勤手当からまかなうことが可能ですが、ひと月あたりの通勤手当と、リモートワーク手当を比較すると、通勤手当の方が高額になるケースもありますから、その場合には企業側のコスト削減につながります。
また、リモ―ワーク導入によりオフィス自体が縮小されるとオフィスの光熱費も削減され、結果的に大幅なコストダウンにつながります。
メリット②モチベーションの向上
リモートワークにかかる費用を会社がサポートしてくれるのは、従業員にとっては大きなメリットです。住宅手当や家族手当と同じく、従業員への経済的支援は企業への帰属意識を高め、従業員の仕事に対するモチベーションも向上するでしょう。
メリット③会社のイメージアップ
リモートワーク手当の導入は企業のイメージアップにつながります。
時代の変化に柔軟に対応し、企業のあり方を変化させる姿勢は、顧客や取引先など社外からの大きな評価を得られるでしょう。リモートワークにともなう制度を整備することで、時代に合わせて柔軟に変化できる企業の対応力をアピールできるのです。
メリット④働き方の多様性が高まる
リモートワークは仕事と子育ての両立など、仕事とプライベートのバランスが取りやすい働き方といえるでしょう。
リモートワークにかかる費用への心配・不安を払拭するリモート手当の導入は、企業と従業員のどちらにとってもいい変化をもたらします。
メリット⑤離職率の低下
④の場合と同じく、リモートワーク手当による従業員の経済的負担軽減は、育児や介護などの理由による離職防止にもつながります。
育児や介護にはそれなりの費用がかかりますから、大きな金額とは言えないリモートワーク手当であっても家計の一助となるはずです。
リモートワーク手当のデメリット
リモートワーク手当の支給は、メリットだけではありません。
手当が支給されると手取りの金額は増えるのでデメリットはあまりないように思えますが、場合によってはデメリットになりうるケースもあります。
リモートワーク手当よりも自己負担金額が多い
リモートワーク手当の金額が日額や月額などで決まっている場合、実際にリモートワークで従業員が負担している額よりも低くなるケースがあります。季節による光熱費の変動や物価の上昇があると「損をしている気分」になる方もいらっしゃるでしょう。
場合によっては清算の必要がある
リモートワーク手当が一定額ではなく、実際使用した経費を請求する方法をとる企業もあります。その場合は、必要に応じて精算・請求をしなければなりません。するとリモートワーク中の光熱費や、出社した日の交通費を毎月請求する手間がかかります。
また、申請を忘れた場合は支払いを受け取れないリスクもあるでしょう。
リモートワーク導入に伴い通勤手当の廃止を検討する場合の注意点
フルリモートワークになった場合はリモートワーク手当の支給と入れ替わる形で通勤手当の廃止が視野に入るかもしれませんが、もし廃止を検討する場合は、廃止前に従業員への説明・合意の取得、または就業規則の変更が必須です。なぜなら、一般的に通勤手当は給与の一部と解釈されているため、通知や協議をせずに企業側が一方的に廃止した場合は「労働条件の不利益変更」として違法と判断される可能性があるからです。
通勤手当を廃止するに至った際は、従業員のその旨を丁寧に説明したうえで合意を得て、必ず就業規則の手当についての記載を変更してください。
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リモートワーク手当の導入事例
リモートワークに対応する制度や手当を見直し、従業員をサポートすることで多様な働き方を提案している企業は多くあります。
富士通株式会社
富士通株式会社は「Work Life Shift」という新しい働き方を提唱しています。
具体的には、リモートワーク勤務の環境を整備する費用として月額5,000円を支給しています。
勤務開始・終了時間は仕事とプライベートのバランスに応じて柔軟に調整し、働く場所は自宅やオフィス、社会のサテライトオフィスから選択できます。
(参考:ニューノーマルにおける新たな働き方「Work Life Shift」を推進 : 富士通 LifeとWorkを豊かにする働き方 – 採用情報 : 富士通株式会社)
日本電信電話株式会社(NTT)
NTTはリモートワーク制度・リモートワーク手当・スーパーフレックスタイム・サテライトオフィスの拡充などにより、社員の「働く時間」や「働く場所」の自由度を高めています。
さらに、ワークインライフ(健康経営)をより一層推進していく観点から「住む場所」の自由度を高めるのことが重要であるとし、リモートワークを基本とする新たな働き方を可能とする制度を導入しています。
(参考:リモートワークを基本とする新たな働き方の導入について | ニュースリリース | NTT)
ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ株式会社
ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ株式会社はエンジニアの活躍をサポートする制度・環境の実現を目指している企業です。
自宅やサテライトオフィスで勤務可能な在宅勤務制度「フレキシブルワーク制度」を設け、社員が自身の力を十分に発揮できる柔軟な勤務スタイルを導入しています。
(参考:働く環境と制度(勤務制度)|採用情報)
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社のリモートワークの導入は早く、制度やツール整備の支援を積極的に行ってきました。多様な希望に合わせた制度を作り、その制度は利用する従業員からの意見を反映して常に改善されています。
従業員が希望する働き方とチームのニーズがマッチすれば、ライフスタイルに合わせて勤務時間や働く場所を選択できるうえ、自宅の勤務環境を整えることを目的に、勤務時間や勤務日数にかかわらず1人につき5,000円が支給されます。
(参考:リモートワーク | 採用情報 | サイボウズ株式会社)
note株式会社
「誰もが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッション掲げるnote株式会社では、一人ひとりが最大のパフォーマンスを発揮できるよう、リモートとオフィスのフレキシブル出社制度やフレックスタイムを取り入れて柔軟な働き方を確立しています。
(参考:note社の福利厚生・働き方)
まとめ
今後も多様な働き方の一つとしてリモートワークを導入し、これに関連する制度や手当の充実を目指す企業は増えていくでしょう。
このような取り組みは優秀な人材の流出防止や新たな人材獲得の機会になりますから、人材不足や採用で課題を抱えている企業は、リモートワークやリモートワーク手当の導入を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
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