リモートワークの生産性が下がる理由、生産性を上げる改善策とは?
リモートワークが広がる中、生産性の低下が問題視されることが少なくありません。従業員がどこで働いても高いパフォーマンスを発揮できるようにするためには、何が必要なのでしょうか。
そこで今回は、リモートワークで生産性が下がる主な理由を解説するとともに、生産性を改善するための具体的な方法やツールをご紹介します。
目次
リモートワークで生産性は上がるか、それとも下がるのか?
リモートワークが生産性に与える影響についてはさまざまな見解があり、一様ではありません。
テレワークで柔軟な働き方が可能になることで集中して作業できるといった意見がある一方、リモートワークでは生産性が低下するとの声も上がっています。
パーソル総合研究所が2020年に実施した所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によれば、出勤時の仕事の生産性を100%としたとき、テレワークの生産性は全体平均で84.1%との回答が出ています。
(参考:パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」)
また、シンクタンクのマッキンゼー・アンド・カンパニーによる2020年のレポートでは、リモートワークでコミュニケーションや議論の機会が減少することで生産性にマイナスの影響を与える可能性が指摘されています。
(参考:McKinsey & Company “Reimagining the postpandemic workforce“)
結局、リモートワークが生産性に与える影響は、個々の従業員の適応能力や企業のサポート体制、業務内容などに大きく依存するため、一概に「生産性が上がる」または「下がる」と言い切ることはできません。
リモートワークで生産性が下がる理由
従業員からリモートワークの希望が多数出ている、もしくはフルリモートワークへの移行を検討している企業にとって、生産性の低下リスクはリモートワーク導入前にしっかり確認しておきたい点ではないでしょうか。
では、リモートワークで生産性が下がる原因にはどのようなものが考えられるのか、詳しく見ていきましょう。
コミュニケーション不足
リモートワークでは対面でのやり取りが減少するため、情報の伝達や意思疎通が難しくなることがあります。特に、チーム内でのコミュニケーションが不足すると、プロジェクトの進行が遅れるだけでなく、誤解や認識のズレが生じやすくなります。この結果、業務の効率が低下し、生産性に悪影響を与える可能性があります。
作業環境の整備不足
自宅での作業環境が整っていない場合、生産性が大幅に低下することがあります。たとえば、適切なデスクや椅子がない、インターネット接続が不安定、集中できる静かなスペースが確保できないといった状況は業務効率に直接影響を与えるので軽視できません。
仕事とプライベートの境界の曖昧さ
リモートワークでは仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすく、これが生産性に影響を与えることがあります。家事や家族との時間が業務に割り込むことで集中力が散漫になる、終業時間が不明確になると過労やストレスが蓄積する……といったことは最終的には生産性の低下につながります。
進捗管理の難しさ
リモート環境では上司やチームリーダーが従業員の進捗を把握しづらくなりがちです。タスクの優先順位や進行状況が見えにくくなると、プロジェクト全体の進行が停滞することがあります。また、個々の従業員が自分の進捗を正確に報告するためのシステムが整っていないと報告内容と実際の業務内容にギャップが生じ、信頼関係が揺らぐ可能性もあるでしょう。
孤立感とモチベーションの低下
リモートワークの導入により、同僚との気軽な交流や雑談がなくなることでチームの一体感が失われ、結果的に仕事に対する意欲が薄れることがあります。人によっては孤独に陥り、退職につながってしまうこともあるので注意が必要です。
技術的な問題による業務の停滞
リモートワークでは技術的な問題が生産性の低下につながることも少なくありません。わかりやすい例ではインターネット接続の不安定さ、必要なソフトウェアやハードウェアの不足・利用方法の不周知、技術的なトラブルに対するサポート不足などが挙げられます。
自己管理の難しさ
リモートワークでは自己管理能力が強く求められますが、これが難しいと感じる従業員も多いのが現実です。自己管理がうまくいかない場合は時間の使い方が非効率になり、タスクが計画通りに進まず、生産性に悪影響を及ぼします。
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チームワークの喪失
対面での交流が減少することで、従業員同士の信頼関係や連携が薄れ、チームワークが損なわれることがあります。このようなチームワークの喪失は従業員が会社やチームに対して疎外感を感じる要因となり得るでしょう。特に、新入社員やチームに新たに加わったメンバーにとっては他のメンバーとの関係構築が難しくなり、組織への適応が困難になることが考えられます。
リモートワークにおける生産性を向上させるための改善策
では、リモートワークで出勤時とほぼ変わらない生産性の維持、あるいはそれ以上に生産性を上げていくにはどうすれば良いのでしょうか。
コミュニケーションとチームワークの強化
リモートワークでは対面でのやり取りが減少するため、コミュニケーションが重要な課題となります。チームの生産性を向上させるためには、定期的なビデオ会議やチャットツールを活用してチーム内の情報を共有したり、進捗状況を確認したりすることが不可欠です。また、透明性の高いコミュニケーションを促進し、質問や意見が自由に交わされる環境を整えることも忘れずに。
適切な作業環境の整備 テレワーク手当も有効
生産性を向上させるためには、快適で集中できる作業スペースを確保することが必要です。具体的には、適切なデスクや椅子、安定したインターネット接続、静かな環境が挙げられます。そのため、企業がテレワーク手当や必要な備品を支給して、作業環境の整備をサポートすることも効果的です。
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プロジェクト管理ツールで業務を可視化する
プロジェクト管理ツールを活用してタスクの進捗を可視化し、チーム全体で情報を共有することで、各メンバーが効率的に業務を進めることができます。これにより、プロジェクトの遅延を防ぎ、生産性を向上させることができるでしょう。
明確な目標設定
リモートワークでは個々の従業員が自律的に仕事を進める必要があります。そのため、企業は各メンバーに対して明確な目標を設定し、その達成状況を定期的に確認することが重要です。具体的な目標の設定は集中して業務に取り組むきっかけとなり、生産性を向上させることができます。
ハイブリッドワークの導入
ハイブリッドワークはリモートワークの柔軟性と出勤時の対面コミュニケーションのメリットを融合させた働き方です。この働き方を導入することで、リモートワークの課題であるコミュニケーション不足やチームワークの希薄化を補完しつつ、柔軟は働き方で従業員の業務効率を向上させる効果が期待できます。たとえば、数日をオフィス勤務とし、残りをリモートで行うことで、従業員は対面での協力が必要な業務や会議を効率的にこなす一方、集中が必要な個別タスクは自宅で行うことが可能になります。
実際、週に何日かはリフレッシュを兼ねて出勤する方が業務にメリハリがついて仕事が進むと感じる従業員は多く、新型コロナウイルス感染症の沈静化後ははハイブリッドワークを導入する企業が急増しています。
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リモートワークの生産性を上げるツールを活用しよう!
リモートワークの生産性向上には適切なツールの導入が非常に重要です。特に以下のツールはリモートワークで効率的に仕事を進めるのに役立ちます。
コミュニケーションツール
SlackやMicrosoft Teams、Zoomといったコミュニケーションツールの活用が有効です。これらのツールを使うことでリアルタイムかつ対面でのコミュニケーションとほとんど変わらないやり取りが可能になり、チーム内での情報共有や意思疎通がスムーズに行えるようになります。
プロジェクト管理ツール
リモートワークではチームメンバーが異なる場所で作業するため、プロジェクトの進捗を一元管理することが難しくなりますが、AsanaやTrello、JIRAなどのプロジェクト管理ツールを導入すれば、タスクの進行状況が可視化され、チーム全体での進捗管理が容易になります。
リモートアクセスツール
リモートワークでは社内のサーバーやシステムにアクセスするためのリモートアクセスツールの導入が便利です。VPN(仮想プライベートネットワーク)やクラウドベースのリモートデスクトップツール(例:TeamViewer、AnyDesk)などがその一例ですが、これにより、従業員は自宅からでも容易に会社のシステムにアクセスし、業務を遂行することができます。
勤怠管理ツール
リモートワークでは勤怠確認や労働時間の管理が難しいとされてきましたが、勤怠管理ツールを導入すれば、リモート環境でも従業員の出退勤時間や勤務状況を正確に記録・管理できます。これにより、企業は従業員の働きすぎを防止し、適切に労働時間を管理しながら生産性を高めることができるでしょう。
まとめ
リモートワークで生産性が下がる例があるのは事実です。しかし、適切な対策の実施と便利なツールを活用することで、従業員がどこにいても高いパフォーマンスを発揮できるようになることは不可能ではありません。リモートワークの生産性に懸念がある場合、まずは生産性を下げる原因なり得る要素が存在しないかどうか丁寧に確認していく必要があるでしょう。
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