テレワークで起きた失敗事例とその原因とは?〜企業が見逃していたポイントを探る〜

テレワークで起きた失敗事例とその原因とは?〜企業が見逃していたポイントを探る〜

新型コロナウイルスの影響や働き方改革の推進により、テレワークは一時的な対応策から新たな働き方の一つとして定着しつつあります。しかし、急速な導入が進む中で、十分な準備や対策が行われずに失敗してしまうケースも少なくありません。テレワークの成功には企業と従業員の双方が抱える課題を正確に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。
そこで今回は、失敗事例を通じて、企業が見逃していたポイントと、その解決策を探ります。

よくあるテレワークの失敗事例

新型コロナウイルス感染症の拡大が問題になる以前は、日本国内でテレワークは今ほど浸透していませんでした。
そのため、緊急事態に備えて急いで導入した企業では業務がうまく回らず、次のように失敗に終わってしまったパターンが多く見受けられます。

失敗事例1:コミュニケーション不足によるプロジェクトの遅延

あるIT企業ではテレワークの導入後、プロジェクトの進行が大幅に遅れました。
チームメンバー間の情報共有が滞り、タスクの重複や抜け漏れが頻発したのです。

<原因>
・適切なコミュニケーションツールの導入・活用がうまく進んでいない
・定期的なミーティングや報告体制の欠如

<見逃していたポイント>
オンライン環境でのコミュニケーションは対面と比べて情報伝達の質と量が低下しがちです。
テレワークで失敗した企業の多くは従来の対面コミュニケーションが行われる前提で業務を設計しており、テレワーク環境への移行に伴うコミュニケーション手段の再設計を怠っています。
また、情報共有の指針や方法を明確に定めず、各々に任せている場合も問題です。

失敗事例2:情報セキュリティの脆弱性から生じたデータ漏洩

在宅勤務中の従業員のパソコンがウイルスに感染し、顧客情報が外部に流出しました。
この事故により、企業の信頼性が大きく損なわれました。

<原因>
・セキュリティソフトの未導入や更新不足
・従業員へのセキュリティ教育の不足

<見逃していたポイント>
オフィス環境では情報システム部門がセキュリティを一元管理できますが、テレワークでは各自の自宅環境がセキュリティの弱点となり得ます。
つまり、在宅勤務環境にもオフィスと同等のセキュリティ対策を適用する必要があります。

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失敗事例3:労働時間の管理不備による過重労働

テレワーク導入後、労働時間の境界が曖昧になり、従業員が過労で体調を崩すケースが増加。
離職者も増えました。

<原因>
・勤怠管理システムの未整備
・上司と部下間での労働時間に関する認識のズレ

<見逃していたポイント>
企業がテレワークにおける労働時間の適切な管理を怠り、従業員の健康リスクを見逃した結果起こる失敗です。
こうした事態を防ぐためにはテレワーク規程の策定や勤怠管理ツールの導入、管理職による部下の労働状況の定期的な確認や業務量の調整が欠かせません。

失敗事例4:従業員のモチベーション低下と離職率の増加

テレワークにより孤立感や不平等感を感じる従業員が増え、モチベーションの低下や離職につながりました。

<原因>
・従業員同士のコミュニケーションの不足
・不透明な評価制度

<見逃していたポイント>
職場での人間関係はモチベーションに大きく影響しますが、テレワークでコミュニケーションが不足すると従業員の孤立感を強めてしまうことがあります。
また、成果が見えにくいテレワークでは評価制度の透明性がより重要になります。この点があいまいだと「自分を見ていてくれているのだろうか?」「頑張っても評価されないのではないか?」と企業や管理職に懐疑心を持つようになり、離職の要因となることがあります。
さらに、成果主義になじまない業務・職種に対する評価制度をどうするかについても検討する必要があります。

失敗事例5:家庭環境による生産性の低下

自宅での業務環境が整っておらず、子どもの世話や騒音で集中できない従業員が生産性を大きく落としました。

<原因>
・業務に適したデスクや椅子、ネット環境の不足
・家庭内の事情による集中力の欠如

<見逃していたポイント>
テレワーク(在宅勤務の場合)では各従業員の家庭環境が業務効率に直接影響します。
企業は従業員一人ひとりの在宅勤務環境や家庭の事情を考慮せず、一律の対応をしがちですが、必要な設備の提供や購入補助、フレックスタイムの導入など、個々の状況に応じた柔軟な支援について検討した方が良いでしょう。

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失敗事例6:ITリテラシー不足による業務効率の低下

新たに導入したオンラインツールの使い方がわからず、業務が滞る従業員が続出しました。

<原因>
・従業員への適切な研修やサポートの不足
・ツール選定時に現場の意見を反映しなかった

<見逃していたポイント>
テクノロジーの導入は手段であり、目的ではありません。最新のツールを導入することに注力するあまり、実際にそれを使う従業員のリテラシーやニーズを考慮していなければ、便利なツールも意味がありません。
従業員が使いこなせなければ、ツールは逆に業務効率を下げる原因になります。ツール導入時には従業員への十分な研修と継続的なサポート体制が不可欠であることがわかります。

失敗事例7:チームビルディングの欠如による組織力の低下

リモートワークによりチーム間の連帯感が希薄になり、協力体制が崩れました。

<原因>
・オンライン上での交流機会の不足
・チームビルディング活動の未実施

<見逃していたポイント>
チームワークは組織の生産性に直結します。
企業は対面でのコミュニケーションが減る中で、チームビルディングの重要性を見逃していました。オンラインでもチームの一体感を醸成するために、バーチャルイベントやチームビルディングのための活動を計画的に実施する必要があります。

失敗事例8:法令遵守の認識不足による労務トラブル

労働時間の管理不備から労働基準法違反が発覚し、行政から指導を受けました。

<原因>
・テレワークに適した就業規則の未整備
・労務管理に関する知識不足

<見逃していたポイント>
オフィス勤務時の就業規則をそのまま適用し、テレワークに合わせた労務管理を行なっていなければ、働き過ぎや残業代の未払い、各種ハラスメントなどの問題が起こる可能性があります。
テレワークという働き方に合わせた就業規則を規定し、労働に関する法令は遵守しなければなりませんから、専門家の助言を得て就業規則を見直す必要があります。

失敗事例9:顧客対応の品質低下による信頼喪失

テレワーク移行後、顧客からの問い合わせ対応が遅れ、不満が蓄積しました。

<原因>
・顧客対応フローの未整備
・従業員間の情報共有不足

<見逃していたポイント>
顧客対応は企業の信頼を築く重要な要素です。
企業はテレワーク環境での顧客対応方法を明確に定めなければ、遅れや不正確な対応で顧客を失うリスクが高まります。
顧客対応フローを最適化し、情報共有の仕組みを整えることで、顧客満足度を維持・向上させる必要があるでしょう。

失敗事例10:コスト管理の不備による経営悪化

テレワーク関連のシステムやツールに無計画な投資を行い、経営を圧迫しました。

<原因>
・コスト効果の分析不足
・ROI(投資対効果)の無視

<見逃していたポイント>
新しいツールやシステムの導入はコストがかかります。
最新の技術を取り入れることに注力するあまり、その投資が実際にどれだけの効果を生むかを十分に検討していないパターンが見られます。
ROIを意識し、費用対効果の高い投資を行うことで無駄なコストを削減し、経営の健全性を維持することが重要です。

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テレワークで失敗した企業に共通していることとは?

これらの失敗事例に共通しているのは、「事前準備の不足」と「継続的な改善の欠如」です。
テレワークは単に働く場所が変わるだけではないので、働き方そのものを再設計する必要があります。
企業文化、業務プロセス、コミュニケーション手段、評価制度など、組織全体を見直し、新しい働き方に適応させることが大切です。

成功するテレワークのための具体的対策

テレワークを成功させるためには、入念な準備とトラブルを見越した各種対策が必要です。
これからテレワークを導入する企業、従業員からの要望でテレワークを再開する企業は次のような対策を行いましょう。

コミュニケーションの活性化

チャットツールやビデオ会議システムを効果的に活用し、定期的な情報共有やミーティングを実施します。
たとえば、Slack、Microsoft Teams、Zoomなどのツールを導入し、リアルタイムでの情報交換を可能にします。

<具体的な対策>
・定期的なミーティングの実施
毎朝短時間のオンライン会議で、各メンバーのタスクや進捗を共有しましょう。
全員がプロジェクトの状況を把握できれば、タスクの重複や抜け漏れを防げます。

・オンライン雑談スペースの設置
従業員同士が気軽にコミュニケーションできるチャットルームを作成し、雑談やアイデア交換を促進しましょう。
リモート環境でも人間関係を深めることで、チームに一体感が生まれます。

・情報共有のルール化
ドキュメントの保存場所や命名規則、共有方法を統一し、情報の検索性と透明性を高めましょう。
共有フォルダやクラウドサービスを活用し、必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整えることをおすすめします。

情報セキュリティの強化

VPN(Virtual Private Network: 仮想プライベートネットワーク)や最新のセキュリティソフトを導入し、情報漏洩やサイバー攻撃から企業資産を守りましょう。
また、従業員に対するセキュリティ教育を徹底することも必要です。

<具体的な対策>
・セキュリティポリシーの策定と周知
データの取り扱いやアクセス権限、パスワード管理などについて明文化し、全従業員に徹底します。

・定期的なセキュリティ研修の実施
フィッシング詐欺やマルウェアの最新動向を共有し、従業員のセキュリティ意識を高めます。

・多要素認証の導入
システムへのログイン時に、パスワード以外の認証要素(ワンタイムパスワードや生体認証)を追加し、不正アクセスを防止します。

労働時間と評価の明確化

勤怠管理システムを導入し、従業員の労働時間を正確に把握しましょう。
また、成果に基づく評価制度を整備し、公平で透明性のある評価を行うことも忘れないようにしてください。

<具体的な対策>
・勤怠管理ツールの活用
打刻や労働時間の記録を自動化し、過重労働を防止するために、勤怠管理ツール(ICTツール)を利用しましょう。
リアルタイムで労働状況を確認できるので、適切な労務管理が可能です。

・目標管理制度(OKR/KPI)の導入
個人やチームの目標と成果指標を明確に設定し、業務の進捗と成果を可視化しましょう。

・定期的なフィードバックの実施
上司と部下間で1on1ミーティングを行い、目標達成度や課題を共有しましょう。
これにより、早期の問題解決と従業員の成長支援が可能となります。

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従業員エンゲージメントの向上

定期的なコミュニケーションやイベントを開催は従業員のモチベーションアップにつながります。
従業員の声が届くきっかけにもなるので、働きやすい環境を整える手立てになります。

<具体的な対策>
・オンライン懇親会開催
リモート環境でも参加できる飲み会やゲームイベントを企画し、チームビルディングを促進します。

・社内アンケートの実施
テレワークに関する意見や要望を定期的に収集し、改善策を検討します。
従業員の声を経営に反映させることで、信頼関係が深まります。

・メンタルヘルスサポートの強化
カウンセリングサービスの提供やストレスチェックの実施により、従業員の健康管理をサポートします。

テレワーク環境の整備支援

予算に余裕があれば、従業員が快適に働けるよう、必要な備品や設備の提供を検討しましょう。
なお、在宅勤務の場合はテレワーク手当を支給し、在宅時にかかる費用の負担を軽減する方法もあります。

<具体的な対策>
・備品の貸与・購入補助
デスク、椅子、モニターなどの購入費用を補助し、適切な作業環境を整えます。

・通信費の補助
安定した通信環境を維持してもらうため、自宅のインターネット回線やモバイル通信費用の一部を負担します。

・リモートワーク手当の支給
在宅時の光熱費や電気代の増加分をカバーする手当を支給し、経済的な負担を軽減します。

教育と研修の充実

新しいツールの使い方やリモートワークのベストプラクティスを共有し、従業員のスキルアップを促進しましょう。

<具体的な対策>
・オンライン研修の実施
ツールの操作方法やセキュリティ対策、リモートでの効果的なコミュニケーション方法などを学ぶ機会を提供します。

・eラーニングの導入
自主学習できる教材やコースを用意し、従業員の自己啓発を支援します。

・メンター制度の導入
経験豊富な従業員が新人やスキル不足の従業員をサポートし、組織全体のレベルアップを図ります。

法令遵守と就業規則の見直し

専門家の助言を得て、テレワークに適した就業規則や労務管理体制を必ず整備しましょう。
企業として、労働基準法や個人情報保護法などの法令を遵守するのは必須です。

<具体的な対策>
・就業規則の改訂
テレワークに関する勤務時間、休憩、残業、労働条件などを明確に定め、従業員に周知します。

・労務管理システムの導入
勤務状況をリアルタイムで把握し、法定労働時間を超えないよう管理します。

・専門家への相談
社労士や弁護士に労務管理や法令遵守についてアドバイスを求め、リスクを未然に防ぎます。

顧客対応フローの最適化

テレワーク環境でも顧客対応の品質を維持するために、対応マニュアルを作成し、全従業員に共有します。

<具体的な対策>
・顧客対応マニュアルの作成
対応手順やFAQ、エスカレーションフローを明文化し、一貫性のある対応を実現します。

・顧客管理システム(CRM)の活用
顧客情報や過去のやり取りを共有し、迅速で的確な対応が可能になります。

・定期的な顧客満足度調査
アンケートやヒアリングを通じて顧客の声を収集し、サービス改善に反映させます。

コスト管理とROIの意識

投資対効果(ROI)を定期的にレビューし、無駄なコストを削減するよう心がけましょう。
テレワーク導入時にツールやサービスを活用する場合は、費用対効果の高いものを選んでください。

<具体的な対策>
・コスト分析の実施
テレワーク関連の支出項目を洗い出し、その効果を評価します。

・予算管理の徹底
各部門での支出を可視化し、予算内での運用を徹底します。

・サブスクリプションサービスの見直し
利用状況を定期的に確認し、不要なサービスは解約またはプランの見直しを行います。

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まとめ

テレワーク成功の鍵は、潜在的な課題を認識し、先回りして積極的に対策を講じることにあります。
今回ご紹介した失敗事例から学び、企業と従業員が一体となって新たな働き方を築いていきましょう。

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