フルリモートワークの導入が企業にもたらすメリットとデメリットを解説
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に多くの企業がリモートワークを一時的に導入しましたが、その効果を実感した経営者や労務管理者も多いのではないでしょうか。
しかし、リモートワークには課題も存在し、全面的な導入に踏み切れない企業も少なくありません。原則出勤せず、ほとんどの業務をリモートで行うフルリモートワークであればなおさらでしょう。
そこで今回は、フルリモートワークの導入が企業にもたらす具体的なメリットとデメリットを中心に、それらのデメリットを克服するための対策や、成功事例から学ぶべきポイントもご紹介します。
フルリモートワークのメリット
フルリモートワークとは、従業員がオフィスに出勤せず、完全にリモート(遠隔)で業務を行う働き方を指します。
基本的にインターネットに接続できる場所であれば日本国内はもちろん、海外に在住する従業員でも勤務可能なので、従業員にとっては自由度が高く、柔軟な働き方ができるので大きなメリットがあります。
一方、企業側にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
人材採用の幅が広がる
フルリモートワークを導入する最大のメリットの一つは、人材採用の地理的制約がなくなることです。これにより、地方や海外在住の優秀な人材を採用することができるようになります。
リモートワークを導入すれば、首都圏に限らず、全国のハイスキル人材をチームに迎え入れることができるでしょう。
さらに、育児や介護などの理由で毎日の通勤が難しい優秀な人材も採用しやすくなります。これにより、ダイバーシティ&インクルージョン(組織内で多様な人材を受け入れ、その特性を活かすこと)が推進され、企業の競争力強化にもつながります。
コスト削減
オフィススペースの維持費用は企業経営における大きなコスト要因ですが、フルリモートワークを導入することでオフィスの縮小、場合によっては廃止が可能となり、賃貸料、光熱費、清掃費などの固定費を大幅に削減できます。また、通勤手当やオフィス設備の購入・維持費用も削減できる点も大きなメリットです。
これらのコスト削減により、浮いた資金を人材育成や新規事業への投資に振り向けることが可能となります。経営資源をコアビジネスに集中させることで、企業の競争力を一層高めることができます。
従業員のワークライフバランス向上
通勤時間の削減は、従業員のプライベートな時間の増加につながります。都市部では片道1時間以上の通勤を強いられるケースも多く、通勤ストレスは生産性低下の一因となっていますが、フルリモートワークになればその時間を家族との交流や自己啓発、健康管理に充てることができます。
さらに、柔軟な働き方が可能になるため、従業員の仕事に対するモチベーションも向上するでしょう。結果として、従業員エンゲージメントが高まり、離職率の低下や生産性の向上につながるのです。
業務効率の改善
リクラウドサービスやプロジェクト管理ツール、コミュニケーションツールの活用など、リモートワークの導入は業務プロセスの見直しとデジタル化を促進します。
社内のデジタルツール化が進めば、データの蓄積と分析を容易になり、業務改善や新たなビジネスチャンスの発見にもつながるでしょう。
フルリモートワークのデメリット
フルリモートワークには上記のようなメリットがある一方、デメリットも存在します。
コミュニケーションの課題
特定の業務で情報の伝達や共有が滞るリスクがあります。リモートでは非言語的なニュアンスや表情から得られる情報が欠落するため、誤解やミスコミュニケーションが生じやすくなる点は否めません。
また、雑談や偶発的な交流が減少することで、アイデアの創出や問題解決の機会が減る可能性もあります。
チームの一体感の低下
物理的な距離があることで、チームメンバー間の信頼関係の構築が難しくなる場合があります。新入社員や異動してきたメンバーにとっては、組織に馴染むまでの時間が長くなることもあるでしょう。
セキュリティリスクの増大
通信セキュリティ対策が不十分だった場合は情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まります。特に、機密情報を扱う業務ではセキュリティ対策の不備が深刻な問題を招く恐れがあります。
労務管理の複雑化
従業員の勤務状況が見えにくくなるため、勤怠管理や労働時間の適正把握が難しくなります。また、公平な評価制度の構築や労働法令の遵守においても課題が生じます。
これらを放置すると、従業員の不満やコンプライアンス違反につながる恐れがあり、企業としては大きな問題になるでしょう。
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デメリットへの解決策
確かにフルリモートワークにはデメリットがありますが、それでフルリモートワークを働き方改革の選択肢から外すのは少々もったいないでしょう。
従業員から強い希望がある、人材がなかなか集らない、転居や移住などを原因とする離職が多いといった状況であれば、次のような解決策を念頭に入れてフルリモートワークを検討してみてはいかがでしょうか。
コミュニケーションツールを最適化する
チャットツールでは即時性のある連絡を、ビデオ会議では定期的な顔合わせを……といったように、コミュニケーションの質を高めるためには、適切なツールの導入と運用ルールの整備が必要です。
また、従業員のITリテラシーレベルによってはオンライン上でのコミュニケーションスキルを向上させるための研修を実施する必要もあるでしょう。
企業文化を醸成する
リモート環境でも企業文化を維持・強化するために、定期的なオンラインイベントや交流会の開催を検討しましょう。具体的には、バーチャルランチやオンラインゲーム、勉強会などが挙げられます。
また、社内SNSやイントラネットを活用して、成功事例やナレッジを共有し、組織全体の一体感を作り出すこともおすすめです。
セキュリティ対策の強化
技術的な対策として、VPNの導入やエンドポイントセキュリティの強化を行いましょう。データの暗号化やアクセス権限の管理を徹底し、不正アクセスを防止することが重要です。
また、従業員に対するセキュリティ教育を定期的に実施し、情報管理の重要性を周知徹底してください。
労務管理システムの導入
勤怠管理システムを導入し、労働時間を正確に把握できるようにしましょう。これにより、過重労働の防止や適正な残業管理が行えるようになります。
また、成果主義に馴染む部署や業務には成果主義に基づく評価制度を導入し、公平性と透明性を確保しましょう。労務管理の専門家を活用して、法令遵守の体制を整備することも忘れずに。
フルリモートワークを導入するためのステップ
フルリモートワークの導入を決定しても、働き方が根本的に変わる以上、企業・従業員双方に大きな影響がでるので、次のようなステップを一つずつクリアして、円滑なフルリモートワークへの移行を心がけましょう。
フルリモートワークの適応性評価
自社の業務内容や組織体制を客観的に分析し、リモートワークへの適応可能性を判断しましょう。
業務プロセスのどこにリモート化の障壁があるのか、どの業務がリモートに適しているのかを明確にします。
法令遵守と労働条件の整備
リモートワークに関する労働法令や規制を確認し、就業規則や労働条件を整備してください。
労働時間の管理や安全衛生管理など、法的な義務を果たすための体制を整え、コンプライアンスを徹底します。
技術的なインフラの整備
安定したネットワーク環境や適切なハードウェア、ソフトウェアの整備を行います。
従業員が自宅から安全かつ効率的に業務を遂行できるよう、必要なツールや機器を提供し、技術的なサポート体制を構築します。
セキュリティ対策の強化
VPNの導入やデータの暗号化、アクセス権限の管理など、技術的なセキュリティ対策を強化しましょう。
また、従業員に対するセキュリティ教育を実施し、情報管理の重要性を周知徹底します。
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コミュニケーションツールの導入と運用ルールの整備
チャットツール、ビデオ会議システム、プロジェクト管理ツールなどを導入しましょう。
これらのツールの効果的な活用方法やコミュニケーションマナーについて、明確な運用ルールを策定し、従業員に周知します。
従業員の意識改革と教育
リモートワークに必要なスキルやマインドセットを身につけるため、従業員への教育プログラムを実施しましょう。
自己管理能力やオンラインでのコミュニケーションスキル、セキュリティ意識の向上などを重点的に指導します。
評価制度と労務管理の見直し
リモートワーク環境下での適切な人事評価制度や労務管理体制を構築しましょう。
成果主義に基づく評価基準の策定や、クラウド型勤怠管理システムの導入を検討します。これにより、公平性と透明性を確保し、従業員のモチベーションを維持できるようになります。
段階的な導入計画の策定
最初から全面的な導入をするのではなく、少人数や特定の部署で試験的かつ段階的に導入することをおすすめします。
これにより、課題やリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることができます。また、従業員からのフィードバックを活用して、導入プロセスを最適化します。
企業文化の維持・醸成
オンラインイベントやバーチャルな交流活動を定期的に開催し、従業員同士の交流促進を図りましょう。
企業理念やビジョンの共有を継続し、組織の一体感を保つ取り組みが重要です。
継続的な改善とフィードバックの仕組みの構築
フルリモートワーク導入後も、定期的な評価と改善を行いましょう。
従業員からのフィードバックを収集する仕組みを構築し、課題の早期発見と解決に努めてください。また、市場動向や技術革新に合わせて、業務プロセスやツールの見直しも継続的に行うことをおすすめします。
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まとめ
フルリモートワークの導入は、企業にとって多くのメリットをもたらす一方、克服すべき課題も少なくありません。
しかし、適切な対策と準備を行うことで、これらの課題は克服可能です。フルリモートワークは、人材の多様化、コスト削減、生産性向上といった競争力強化につながる働き方です。
経営者や労務管理者の方は、自社の現状と将来のビジョンを踏まえ、フルリモートワークの可能性を検討してみてはいかがでしょうか。
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