テレワーク中のカメラ監視が信頼関係に与える影響と生産性を高める代替アプローチ
感染症の拡大により、突如、多くの企業がテレワークを導入することになりました。すると直接働きぶりを確認できない不安から、就業中にパソコン内蔵のWebカメラ(または外付けのWebカメラ)をオンにさせて監視する企業がちらほら出てくるようになったといいます。
しかし、常時カメラで見張ることによるプライバシーの侵害や職場の信頼関係に対する懸念は無視できません。
そこで今回は、テレワーク中のカメラ監視が職場の信頼関係に与える影響や、カメラ監視に頼らずとも、業務の生産性を高められる代替アプローチについて解説します。
目次
テレワーク中にカメラを常時オンにさせる目的は?
テレワーク中、常に業務の様子がカメラに映し出され、上司や同僚が確認できる状態―。
まるで出勤時と同じような環境になり、いつでも周りに話しかけて気軽に相談できそうだと言えば聞こえはいいですが、実は対面よりも緊張を感じるビジネスパーソンは多いものです。
企業がカメラで監視する目的、それはやはり働きぶりをチェックするためです。
もちろん、従業員同士のコミュニケーションを円滑にする目的もありますが、その場合でも業務の監視を兼ねていることがほとんどでしょう。
「適度な緊張感がなければ、だらけてしまう」。こう考える企業では、テレワークで業務の生産性を下げないよう、監視体制を強めてしまうのです。
カメラ監視のメリットとデメリット
それではここで改めて、カメラを常時オンにさせて働きぶりを監視することのメリット・デメリットを確認していきましょう。
カメラ監視のメリット
カメラ監視の主なメリットは、業務状況の可視化とセキュリティ強化にあります。
業務状況の可視化、つまり監視なわけですが、遠隔地にいる従業員の姿をカメラを通して見ることで「管理職が働きぶりを確認しやすくなる」「困っていそうならすぐに声をかけてサポートできる」というメリットがあります。わからないこと・迷っていることがあれば表情や態度に表れるものですし、メンバーの顔が見えて、いつでも話しかけられる雰囲気であれば、早期に相談・解決できるでしょう。
また、情報漏洩の防止や企業資産の不正利用を抑制する手段としても有効です。特に、データセキュリティを重視する企業にとっては、監視が安全性の確保に役立つ場面もあります。
カメラ監視のデメリット
・プライバシーを侵害する可能性
一方で、カメラ監視にはデメリットもあります。最大の課題は、従業員のプライバシーの侵害です。在宅勤務の場合は家庭というプライベートな空間で業務を行うため、監視カメラが常に作動して室内が映し出されている状況は、人を自宅に招いている状況とほぼ同じと言えるでしょう。背景を画像で隠す背景エフェクトを設定できれば解決できる問題ですが、自宅にいるときの表情を常にカメラに映さなければならないこと自体が大きなストレスになりますし、それを強いていること自体がプライバシーの侵害になるとの考え方もできるでしょう。
また、過度な監視は「会社に信用されていない」との印象を従業員に与えてしまうこともあります。信頼関係が構築できなければ、長期的には従業員のエンゲージメントが低下し、逆に生産性が低下する可能性も。
・「見せかけの業務」へのシフト
監視されている状況では、従業員が「見せかけの業務」を行う傾向が強くなることが指摘されています。
つまり、実際にはさほど集中していないのにもかかわらず、監視の目を意識して見せかけのパフォーマンスを優先するようになってしまうのです。こうした状況では業務の生産性だけでなく、信頼関係が崩れ、チームの連携も乱れる可能性があります。
テレワークでは、従来のオフィス環境と異なり、業務の管理が見えにくいため、企業は監視の必要性を感じがちです。しかしながら、カメラ監視に伴う課題を十分に考慮しなければ、本末転倒な結果になってしまうこともあるのです。
カメラ監視に頼らずともテレワーク中の生産性を維持・向上できる代替アプローチ
働きぶりと生産性を確認し、管理職が適切な監督・管理を行える方法は、カメラによる監視以外にもあります。テレワーク導入企業の業務管理者や経営者の方は、以下の方法を検討してみましょう。
ミーティングで進捗を確認する
チームでの定期的なミーティングや1対1ミーティングを通じて、従業員と管理者の間でオープンな対話を促進しましょう。このときに業務の進捗や課題、困りごとなどをしっかりヒアリングして、適切な指示を出してください。
進捗については従業員がありのままの事実を伝えやすいよう、プレッシャーをかけないようにするのがポイントです。
目標管理(OKR/KPI)による成果ベースの評価システムを導入する
テレワークでは、目標管理手法(OKRやKPI)を活用した成果ベースの評価システムが効果的です。
個々の従業員に達成すべき目標を明確にし、その結果やアウトプットに基づいて評価することで、時間に依存せず、業績を客観的に判断できます。
これにより、従業員のモチベーションが高まり、自主的な取り組みを促す環境が整うでしょう。週次や月次での目標設定と達成度の評価を行うことで、継続的な改善と自己管理がしやすくなります。
ただし、成果ベースの評価システムと相性が悪い部署や職種については別の方法を検討しましょう。
生産性分析ツールの活用
生産性分析ツールを活用することで、作業時間やタスクの進捗状況をデータとして可視化できるようにすれば、カメラ監視に頼ることなく、従業員のパフォーマンスを効果的に管理できます。
各メンバーの生産性を定量的に把握することで、業務の改善点を見つけやすくなり、より的確なサポートや指導が可能になるでしょう。
生産性分析ツールは成果ベースの評価システムに向かない部署や職種においても有効です。成果物や売上といった概念で生産性を測れない業務は、正確な勤怠記録と就業中の作業状況のデータの把握が評価指標の一手段となるからです。
チームビルディングの強化
最後に、チームビルディングの活動を通じて信頼関係を強化することも大切です。オンラインでのチームイベントや社内SNSを活用したコミュニケーションを促進し、お互いを知ることで、チームの一体感を高めるとともに、信頼関係の構築にも役立ちます。
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カメラオンによる監視がリモハラになる可能性とその防止策
先ほども少し触れましたが、テレワーク中のカメラ監視はプライバシーを侵害する可能性を含んでいます。これはつまり、リモートハラスメント(リモハラ)につながるリスクと言えるでしょう。
現在カメラ監視を実施している場合は、カメラの使用方針を明確にし、必要な場面に限定することを検討してみてはいかがでしょうか。
たとえば、「ミーティング時のみカメラをオンにする」「顧客との打ち合わせ以外ではオフにしてもよい」などのルールを設けることで、従業員のプライバシーと心理的安全を守ることができます。
コミュニケーションを促進する方法としてカメラオンを強制せず、音声のみの会議やチャットツールを積極的に活用することも有効です。
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まとめ
テレワーク中のカメラ監視は生産性を上げる有効な手段のように見えますが、長期的には信頼関係を損ね、生産性の低下を招くリスクがあります。
テレワークの長所を最大限に活かし、生産性を高めるには、監視ではなく成果や生産性分析ツールから得られる客観的なデータ基盤とした評価制度、そしてお互いを尊重し、励まし合うチームの構築が大切です。
カメラに頼らず、従業員の自主性や創意工夫を引き出すアプローチこそ、持続的な成長を実現する鍵となるでしょう。
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