2021. 7. 17 勤怠・労務

テレワークで労働時間の管理は可能?管理の目的や時間管理方法を紹介!

社員の満足度が高まったり、生産性が向上したりするテレワーク。しかし、実施方法を誤ると、逆に企業の生産性を大幅に落としかねない働き方でもあります。本記事では、テレワークにおける労働時間管理をメイントピックとして解説。

テレワークの導入を妨げている要因として「労働時間の管理の大変さ」が指摘されています。
確かにテレワークに移行することによって管理体制を変えなければならないのは企業にとって大きな負担です。しかし、テレワークの導入によって「社員の満足度が高まる」「生産性が向上する」といった恩恵もあります。

今回はテレワーク時における「労働時間の管理の目的」「具体的な時間管理の方法」を解説します。テレワークをこれから導入することを検討している方向けの記事となっております。

テレワークでの労働時間に関する課題

まずはテレワークにおける労働時間に関する課題を紹介します。

社員の労働時間が長くなっている


テレワークを導入することで社員の労働時間の超過が指摘されています。日本労働組合総連合会(以下「連合」)が2020年に実施した調査では4月以降のテレワーク勤務に関して、半数以上の方が以下のような経験していることがわかりました。

・仕事とプライベートの時間の区別がつかなくなる(71.2%)
・勤務時間の間に定められた休憩時間がきちんととれない(53.6%)
・深夜の時間帯(午後10時〜午前5時)に仕事をする(51.5%)

上記の内容から分かるのは、通常の業務以上にテレワークは労働時間が長くなったり、プライベートと仕事の区別が難しくなっているということです。さらに、テレワークにおいて時間外労働や休日勤務を行なったにも関わらず、勤務報告がされていないケースも存在します。

その理由を連合の調査で見てみると、「申告しづらい雰囲気だから」「時間管理がされていないから」といった声が上位を占めています。
テレワークの追加労働を申告しなかった理由
出典:連合「テレワークに関する調査2020

テレワークを導入した企業には社員の労働時間が超過しないための対策としてこのような時間労働の管理が求められています。

企業にとってテレワークの労働時間管理は大変

企業側としてはテレワーク時の労働時間の管理の煩雑さが原因で、テレワークの実施に踏み切れないことも多数あります。テレワークの労務管理等に関する実態調査によると上位5項目のうちに「従業員の勤怠管理や在籍・勤務状況の確認が難しいから(14.6%)」という理由が挙げられています。

その他にも「長時間労働になることが懸念されるから(1.5%)」という理由で導入を躊躇する企業もあるようです。
テレワークを導入・実施していない理由
出典:テレワークの労務管理等に関する 実態調査(速報版)

テレワーク時の管理問題として度々上げられるのが「業務評価の問題」。オフィス勤務時にはタイムカードなどの管理方法を採用することで社員の勤務時間を視覚化することができていました。

企業側はその勤務時間に基づいて社員の評価を行っていました。しかし、テレワークに移行することで社員の労働時間を正確に管理することが難しくなりました。

そのため、企業はテレワークで社員の労働時間を管理するための体制を整えなければならないのです。
 

なぜ企業は労働時間の管理を行う必要があるか?

テレワーク導入の障壁となっているのが労働時間の管理であることがわかりました。では企業が労働時間を管理しなければならない理由を見ていきましょう。

労働時間を客観的に記録する義務

2019年4月1日から実施されている働き方改革の一環として、企業には「労働時間を記録する義務」が課されることになりました。これは「労働安全衛生法第66条の8の3」に基づいています。これまでも企業に対しては、厚生労働省のガイドラインによって労働時間を把握することが求められていました。

ただし、この目的はあくまでも「割増賃金を正確に支払うため」という限定的なもの。つまり、割増賃金が発生しない「みなし労働者」「裁量労働者」などに関しては、適切な労働時間を把握できていないことがあったのです。

このままでは労働時間の把握ができず、過度な労働によって健康を害することもあります。労働時間の管理は、そうした事態を未然に防ぐためにも必要です。テレワークでは労働時間の実態を把握するのが難しいため、より厳格な実施が求められています。

賃金台帳への記載義務

企業に課された義務のひとつとして「労働者の勤務情報を賃金台帳に記録する」というものがあります。これは、労働基準法108条及び労働基準法施行規則54条に基づいたもの。

具体的に記録する内容は以下です。

・労働日数
・労働時間数
・時間外労働時間数(休日、深夜を含む)

上記の記載内容に漏れがあったり、故意に記載しなかったりすると、「30万円以下の罰金」が課されます。

テレワークでは、会社で労働者の様子を見れるわけではないので、労働時間の実態を把握するのが難しいです。しかし、上記の労働時間の把握と同様に、テレワーク下において労働者が適切な時間内で働いているかを把握することは欠かせません。

未払賃金対策

未払い賃金対策は、テレワーク実施時にも求められます。もしも未払い賃金が発生した場合は、それは労働基準法に違反することになるため、書類送検されるなど重い罰則が課されることになるのです。

未払い賃金対策は、みなし労働制を採用している企業であっても意識しなければなりません。中には「残業代込みだから割増賃金に関しては気にしなくて良い」と主張する企業もあります。

しかし実際は、みなし労働制や残業代込みの給与を渡している企業であっても、現実の残業時間から計算された残業代がみなし残業代を超えるのであれば、その差額を支払わなければなりません。とくにテレワークを実施していると、労働者の正確な労働時間を把握することは難しいです。

実際よりも残業時間を多くつけている可能性もあるため、会社を守る意味でも、労働時間を正しく把握し賃金を過不足なく支払う環境を整えなければなりません。

長時間労働対策

日本の労働時間は世界的に見ても長い傾向にあります。2019年のOECDの調査によると、各国の平均労働時間は以下のようになっています。

アメリカ:1,779時間
イタリア:1,718時間
日本:1,644時間
イギリス:1,538時間
スウェーデン:1,452時間
フランス:1,505時間
ドイツ:1,386時間

これだけ見ると、アメリカやイタリアと比べてそこま大差がないように思えます。それでは、全労働者の中で「週に49時間以上働いている長時間労働者の割合」も見てみましょう。

日本:21.6%
アメリカ:16.4%
イギリス:12.3%
フランス:10.8%
ドイツ:10.5%
イタリア:9.6%
スウェーデン:9.6%

このように、日本の長時間労働の割合は他国と比較して突出しています。さらに労働生産性に関しては、2020年の調査「OEOCD加盟国34ヵ国中21位」です。日本でどれほど非効率な長時間労働が蔓延しているかがわかるでしょう。

こうした長時間労働を放置しておくと、仕事の生産性が低下するだけでなく健康上の問題や過労、精神性疾患などさまざまな問題が発生します。テレワークでは労働者の姿が見えないため、サボる人だけでなく「頑張りすぎる人」も発生してしまうでしょう。

そうした労働者に仕事が偏り、長時間労働が蔓延してしまうのは避けなければなりません。

メンタルヘルス不調対策

長時間労働によって睡眠時間が減ってしまうと、メンタルヘルスが不調になりうつ病などの発症リスクが高まります。このようなメンタルヘルスの不調に陥ると、脳機能も低下。集中力や判断力などさまざまな力が低下し、組織全体の仕事の質が悪くなってしまいます。

こうしたことを未然に防ぐためにも、労働時間をきちんと管理し、テレワーク下でも適切な時間で仕事をこなしているか把握することが重要です。メンタルヘルスの不調が表れると、勤怠に乱れが生じることがあります。

テレワークだと実際の勤務時間を把握するのは難しいこともありますが、ツールの導入などで労働時間の実態を把握し、メンタルヘルの不調を未然に防ぐことが大切です。

テレワークを効果的に導入するための労働時間管理の方法とは?


最後にテレワークを効果的に導入するための労働時間管理方法を紹介します。

正確な出勤・退勤時間を管理する

労働時間を管理するためには、まず「出退勤時間を正確に管理する」ということが欠かせません。出社していればその場でタイムカードを打つなどの施策が可能ですが、テレワークだとそうもいきません。電話やメールで出退勤を報告するというやり方もあります。

しかしこれでは、限られた時間に連絡が集中するため受け手に負荷がかかりかねません。こうした問題を解決し正しい出退勤時間を管理するために、システムを導入する企業も増えています。

休憩時間を把握する

テレワークでは休憩時間も労働者の裁量に任せられています。そのため、こっそり休憩時間を多めに取ったり、反対に休憩時間を取らず過度に仕事をしたりという事態が起こりかねません。

こうしたことを防ぐために、オンライン上で適度にコミュニケーションを図り、適切な休憩時間を確保するための仕組みを整えることが大切です。

ツールを活用する

労働時間を正しく把握するために、チャットアプリや勤怠管理ツールなどを導入している企業もあります。メールは予約送信なども可能なため、正確な出退勤時刻を把握するのが大変です。

こうしたチャットアプリや勤怠管理ツールであれば、操作履歴なども記録されるため、出退勤時刻や休憩時間を正確に記録することが可能です。

時間外労働に関する取り決めをする

テレワークでは上司の目がないため、時間外労働に関する問題が発生しやすいです。そのため、事前に「時間外労働に関する方針」を定めておきましょう。

例えば、「基本的には時間外労働は禁止だが必要に応じて上長への許可をもらう」といった方法があります。

PCのログを取得する

「PCログ」とは、PCの電源を入れてから切るまでの稼働時間を記録したものをいいます。このPCログがわかれば、実際にどのくらい仕事をしたかのかということを正確に把握可能です。

例えば、勤怠上では「9時〜18時」と打たれているのに、PCログは「9時〜16時」となっていれば、早めに仕事を切り上げていることがわかります。その逆も然りです。

こうした勤務時間の実態がわかれば「業務の割り振りにどういう問題があるのか?」などを可視化することができます。

まとめ

今回の記事ではテレワークにおける「労働時間の課題」「企業が労働時間の管理を行う必要性」「効果的な時間管理方法」を解説しました。テレワーク時の社員の労働時間を正確に管理することは大変です。

しかし、コロナ禍をきっかけに労働形態の見直しが進められています。この働き方の大きな変化を機に、時間管理方法のチェックをしてみてはいかがでしょうか。