柔軟な働き方の一つとして近年注目を集め、一部のベンチャー企業などで取り入れられているフレックスタイム制。
従業員にとっては、働く時間を自分で選べてメリットが大きいこのフレックスタイム制ですが、企業にとっては従業員の管理がしにくく、デメリットが大きいイメージがどうしてもあるのではないでしょうか?
実は、フレックスタイム制を取り入れることで企業にとっても大きなメリットがあるのです。
今回は、そんなフレックスタイム制を導入することの企業にとってのメリットとデメリットについて解説していきます。
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、始業と終業の時刻を、労働者自らが決めることのできる、「変形労働時間制」のひとつです。
日本では大体、朝9時前後に始業、夜18時前後に終業というスタイルが一般的です。
しかし、フレックスタイム制では、この始業と終業の時刻が定まっておらず、従業員自身が前後にずらして調整することができるのです。
朝が得意な従業員であれば1時間早く朝8時に出勤して、代わりに夕方17時に退勤したり
逆に子供がいて朝が忙しいという従業員であれば1時間遅く朝10時に出勤して、夜19時に退勤したり
と言うように、出退勤の時刻を動かして調整することができるのがフレックスタイム制です。
コアタイムとフルフレックス
では、フレックスタイム制を採用している企業であれば、どんな時間に働いても自由なのでしょうか。
極端な話、昼の14時に出勤して、夜の23時に退勤するスタイルでも、8時間働いているので問題ないように見えてしまいます。
しかし、あまりに従業員の働く時間がバラバラだと、企業としては全く管理ができなくなりますし、従業員間のコミュニケーションもまともに取れません。
それを防ぐために、フレックスタイム制を採用している企業では多くの場合、「コアタイム」と呼ばれる時間が設定されています。
コアタイムとは、「この時間は必ず出勤していなければならない」と定められた時間のことで、多くの場合、11時から14時など、12時前後で3~4時間ほどの短い時間で定められています。
このコアタイムを定めることによって、企業は従業員をできるだけ同じ時間を集めることで管理しやすくしたり、従業員同士のコミュニケーションを取りやすくしたりしているのです。
ただし、コアタイムが10時から17時の7時間定められているなど、フレックスタイム制がほとんど機能していない場合は、コアタイムが無効とされることがありますのでご注意ください。
反対に、コアタイムが設定されておらず、従業員が出退勤の時間を自由に決められるフレックスタイム制のことを、「フルフレックス」「スーパーフレックス」と呼びます。
フレックスタイム制と残業時間
フレックスタイム制は、従業員が自由に退勤の時間を決められることから残業時間の概念がないと思われがちですが、実はフレックスタイム制でも残業はあります。
フレックスタイム制の残業は少しややこしいのですが、フレックスタイム制では1日の労働時間が8時間を超えても残業扱いにはなりません。
代わりに、1か月単位で労働時間を計算し、その結果、基準となる所定労働時間を超えていた場合に残業時間が発生します。
基準となる労働時間は、1日8時間、週40時間が前提となりますので、1ヶ月で計算すると、31日まである月は177.1時間、30日までの月は171.4時間となります。
この時間を超えた場合、残業扱いになり残業代が発生します。
フレックスタイム制のメリット
ここからは、フレックスタイム制を導入することで得られる企業側のメリットについて解説していきます。
繁忙期と閑散期の労働力の調整
フレックスタイム制のメリットの1つ目は、繁忙期と閑散期の労働力の調整ができることです。
フレックスタイム制は、1か月単位で労働時間が計算されるため、例えば1ヶ月の中でも忙しくなる月末月初に長めに労働時間を割り当て、代わりに月半ばは労働時間を短めにして従業員に休んでもらうなど、繁忙期と閑散期の労働力の調整がしやすいというメリットがあります。
企業にとっては労働力の調整がしやすく、従業員にとってはワークライフバランスの向上が期待できる、お互いにとってメリットと言えますね。
残業抑制による人件費削減
フレックスタイム制のメリットの2つ目は、残業の抑制による人件費の削減ができることです。
フレックスタイム制は、退勤時間を自分で決められるので、集中して仕事に取り組んで早く終わらせよう、という動機付けが従業員に生まれやすくなります。
その結果として、従業員に仕事のメリハリがつき、無駄な残業や長時間労働の防止に繋がり、人件費の削減が期待できるのです。
優秀な人材の確保
フレックスタイム制のメリットの3つ目は、優秀な人材の確保がしやすいことです。
フレックスタイム制は、従業員にとっては柔軟な働き方ができる魅力的な条件です。
そのため、賃金や他の条件で待遇を上げられない場合に、フレックスタイム制を導入することで、優秀な人材にアピールし、採用を効率化させることが可能になります。
フレックスタイム制のデメリット
ここまで、フレックスタイム制を導入することのメリットを解説してきましたが、残念ながらメリットばかりではなく導入にはデメリットもあります。
ここからは、フレックスタイム制のデメリットについて解説します。
スケジュールが合わせにくい
フレックスタイム制のデメリットの1つ目は、スケジュールが合わせにくいことです。
従業員が勤務する時間がバラバラなので、会議などのスケジュールがなかなか合わないことがあります。
コアタイム中であれば全員出勤しているので大丈夫……と思いきや、コアタイム中は全員スケジュールが埋まっているなんてこともしばしば。
社内の会議であればまだしも、社外との打ち合わせのスケジュールが合わないとなると大きな問題ですので、注意しましょう。
業務効率が悪化する可能性がある
フレックスタイム制のデメリットの2つ目は、業務効率が悪化する可能性があることです。
フレックスタイム制を導入すると、多くの場合、従業員の仕事にメリハリがついて業務効率は向上するのですが、まれに自己管理ができない従業員がいると、出退勤の時間の管理ができず、業務効率が悪化することがあります。
フレックスタイム制を導入する際は、そういった社員がいないか、そういった社員をマネジメントできる体制が整っているかどうかに注意しましょう。
フレックスタイム制って実際どうなの?メリットとデメリットまとめ
今回は、フレックスタイム制とは何かという基本的な内容から、フレックスタイム制を導入することによるメリットとデメリットについての紹介まで、一挙に解説してきました。
フレックスタイム制は、多少のデメリットもありますが、企業にとっても従業員にとってもメリットの大きい制度です。
働き方改革が叫ばれる近年、何か新しいことを始めたいと考えている経営者や労務管理者の方は、フレックスタイム制の導入を検討してみてはいかがでしょうか。